代表|萩原勝吉さん
群馬県渋川市北橘町真壁130
0279-52-3153
しいたけの生産地として歴史の長い渋川市で、50年以上に渡り、しいたけ栽培に取り組むはぎわら農園。かつては夏場の養蚕、冬場の原木しいたけ栽培で兼業農家を営み、15年ほど前に菌床栽培をスタートし、通年生産へ。以降、渋川市北橘地域における菌床しいたけ産業を牽引してきた。現在ハウス12棟を管理しながら5万菌床を仕込み、日量100キロから150キロものしいたけを出荷する。
菌床しいたけの栽培で最も大切なことは、培養環境の滅菌状態を維持しつつ常に新鮮な空気を取り込むこと。なぜなら、空気中に含まれる雑菌の方がしいたけ菌よりも強力なため、滅菌状態でないとしいたけ菌が負けてしまうのからです。このようにデリケートなしいたけ菌を接種する滅菌室には、外気のウイルスを排除した清潔な空気のみを取り込むための外気導入機や、雑菌の元となる有機質を死滅させるための殺菌灯を設置。最新の設備を導入した衛生的な環境を整えています。
また、肉厚でうま味が凝縮された高品質なしいたけの生育には、温度・湿度の管理も重要です。ハウス内の適正温度は12℃~25℃。不適切な室温は生育不良を引き起こす原因になるため、徹底した温度・湿度管理を心がけています。また野菜や米と同様に、しいたけの場合も昼夜の寒暖差が糖度やうま味を左右します。自然の生き物であるしいたけ菌が生息しやすい、自然に則した環境を与えることがとても大切なんですよ。
養蚕と原木しいたけ栽培をしていた父の農家を継いだのが25歳の時。私の代で原木から菌床へと完全移行を果たし、規模を拡大しながら35年間に渡りしいたけ栽培に携わってきました。ピーク時は70~80軒ほどあった農家も、今では5軒のみと少なくなりましたが、地域全体で生産性向上と省力化を図り菌床栽培への切り替えに取り組んできたことで、今も当時とほぼ変わらない生産量をあげることができています。
これまで、地元における菌床栽培の普及や生産県としてのPR、消費拡大活動に力を注ぎ、近年は群馬県きのこ振興協議会の会長や赤城橘椎茸組合の組合長なども務めてきました。今後は、地元のきのこ産業のさらなる発展を目指して、後継者育成にも積極的に取り組み、産地の未来を守っていきたいですね。
香りや風味の高いしいたけは、単なる具材としてだけではなく、味に深みを加えるだしとしての役割も。すき焼きをはじめとした鍋料理なら、最初の段階で鍋に投入して長時間煮込むことでうま味が染み出し、鍋全体が深みのある味わいに仕上がります。また、しいたけは2~3時間ほど直射日光に当てることで、ビタミンDの含有量が増してさらに栄養価が高まるので、購入した際にはぜひ試してみてくださいね。
まとめ買いしたら、1日で食べきれない分は冷凍保存がオススメ。冷凍状態なら1~2ヶ月は保存が可能になる上に、うま味成分や風味もアップします。調理の際は、解凍せずにそのまま使用することで風味を落とさずに味わうことができますよ。
良質なしいたけを見分けるには3つのポイントがあります。まずは、傘の縁に見られるリンピと呼ばれる毛羽立った部分をチェック。傘全体に美しいリンピが広がっていることが、適切な温度や湿度で育った証拠です。2つ目は、傘の内側のひだに注目。ひだは鮮度が落ちてくると茶色っぽく変色するため、白くてハリのあるものを選びましょう。そして3つ目は軸の部分。しいたけは、軸が太くて短いものほど傘の部分に栄養が行き届き、大きく肉厚に育つ傾向にあります。つまり、ずんぐりむっくりした形ほど、食味が良く、厚みがあって食べごたえのあるしいたけといえるのです。