2)麦
1. 養分吸収
 麦は、生育期間が長く、初期には気温も低く生育が緩慢であり、養分吸収は行われるもののその量は少ない。生育の盛んとなる節間伸長期かは、窒素が減少するとケイ酸が増加し、石灰が減少すれば苦土が増加する。硫黄が減少すれば苦土も減少する。苦土欠乏によるケイ酸の著しい減少で稈が弱くなり、倒伏しやすくなるため、バランスのとれた施肥が必要である。
  麦は畑作物であり、無肥料栽培の場合、水稲より減収率が高い。肥料を施用すると、その成分は土壌に吸着された後、作物によって、次第に吸収される。この中には窒素のように比較的速効性のものから、苦土・リン酸のように遅効性のものまである。このため麦の養分要求時期に施用したのでは、気温が低く吸収速度が遅いため間にあわず、先に麦の根圏に近い所へ施用しておくことが大切である。一般的には播種時と分げつ期から幼穂形成期にかけて、基肥や追肥で施用する。
2. 養分の生理作用と施肥
窒素
 麦の生育を左右する大きな要素であり、窒素が少ないと茎葉が淡い色となり、多いと濃緑色となって麦体は軟弱徒長となる。
 一般に、追肥は窒素を施用するが、その施用時期は小麦の場合、茎立ち前までとされる。これは子実中のタンパク質含量を確保するためと粉色低下を回避するためにである。二条大麦の場合、原則として追肥はしない。これは窒素が分解してデンプンになるまでの期間が短く、子実中にタンパク質が多く蓄積され、醸造上好ましくないためである。
 追肥の効果は、1.有効茎数の確保、2.一穂着粒数の増加、3.稔実歩合の向上などである。追肥の施用量は、播種様式や麦の生育状況により異るが、散播は条播に比べて20〜30%増施するとともに、施肥むらが発生しないよう均一な施用を行う。
 なお、水田等で稲わらをすき込んだほ場では、窒素飢餓防止のため基肥の窒素を10a当たり2〜3kg増施するが、連続3年以上すき込んでいる場合には、窒素が有効化してくるので施肥量を減らすことが必要である。窒素施用量は播種様式により異るが、10a当たり基肥として5〜8kgである。
リン酸
  リン酸は、細胞核の重要構成成分であり、麦は初期生育に要求し、また登熱時には子実タンパク質の構成に寄与する。リン酸は土壌中の作物根から出る根酸によって溶解され、作物に吸収される(水溶性リン酸として吸収の早いものもあるが)ため遅効的であり、早い時期(基肥)に施用しておくことが大切である。
  リン酸の子実生産能力は高く、窒素・カリと比べて2倍近い。本県に多く分布する火山灰土壌(黒ボク土)では、施用したリン酸が土壌中の鉄・アルミニウムと結合し、リン酸鉄又はリン酸アルミニウムになって不活性化し、作物に吸収利用されにくくなるため、リン酸を有機物と併用したり、ある程度多量に施用して、可給態リン酸を富化しておくことが必要である。リン酸の施用量は、水田の場合10aあたり9〜13kg、火山灰土壌の畑では10a当たり10〜15kgが標準である。
カリ
 麦の全生育期間中必要であり、炭水化物の合成、移動、蓄積に役立ち、タンパク質の分解にも関係する。カリは、アンモニアと同じように土壌に吸着されるため、基肥に全量施用してよい。しかし塩基保持力の弱い土壌(畑、火山灰土壌)では、溶脱するので分施が必要である。カリの施用量は、10a当たり9〜11kgが標準である。
石灰
  カリと同様に、麦の全生育期間中必要であり、土壌の酸性矯正、同化物質の移動、タンパク質の合成に関与する。また、植物体内の有機酸を中和し、酵素と結合して細胞膜を強化し、根の発育を助長する。このため、適正なpH目標値(6.0〜6.5)になるよう施用量を決定し、土壌改良を兼ねて播種前に施用する。石灰施用量は、苦土石灰で小麦10aの場合は当たり60〜80kg、二条大麦の場合は10a当たり80〜100kgが標準である。