(7)桑
1)桑の養分吸収
 作物による養分吸収はその生育のステ−ジによって異なるが、桑はほとんど栄養生長なので、養分相互間の吸収割合、吸収経過などは比較的単純である。
 養分吸収比率は、窒素 : リン酸 :カリ : 石灰 : 苦土 = 6 : 2 : 4 : 4 : 1 程度である。窒素は2/3以上を硝酸態で与えた場合に、生育がよいという結果が得られている。
 桑が1年生作物と異なる点は、枝・株・根に多量の貯蔵養分を保持し、発芽やその後当分の期間の生育が、これらによってまかなわれることである。桑の1年間の生育は、1.枝葉が主として貯蔵養分によって形成される時期(展開期)、2.枝葉形成および同化吸収の盛んな時期(同化期)、3.吸収同化された養分が貯蔵器官に移行貯蔵される時期(貯蔵期)に大別される。
2)施肥量
 本書の施肥基準は地域別に示したが、さらに細かな条件に対応する必要がある。たとえば、窒素はすべての土壌区分ともに同じ施肥量とするが、リン酸・カリは褐色低地土、灰色低地土でそれぞ15kg、13kg、褐色森林土で15kg、16kg、黒ボク土では16〜18kg、18〜20kgにするのがよいであろう。密植桑園についても、窒素の増施と同じ比率でリン酸とカリの施用量を増やすのがよいと思われる。
3)施肥時期
冬肥: 牛ふんたい肥等を主体とし、11月から2月頃までに施用するのがよいが、密植機械収穫桑園では、収穫後の施用が能率的である。
春肥: 春桑の発芽前20〜30日に施用するのがよい。
夏肥: 春蚕収穫(夏切り)後、遅くとも1週間以内に施用し、夏蚕用桑園では夏蚕収穫後ただちに施用する。
追肥: 7月下旬から8月上旬に行う。
4)施肥位置について
  一般に肥沃な桑園では施肥位置の違いによる肥効差はそれほど大きくないが、肥沃度の低い桑園で特に施肥量が少ない場合は施肥位置が影響し、局所施肥の効果が高い。化学肥料の施用法としては、一般的には省力施肥として全面散布し、ロータリー耕などで土壌と混合する方法でよい。新植桑園では根の分布が株に近いので、植付1〜2年目までは株際より30cm離して施用する方が合理的である。
 有機物の施用は毎年隔うねに表面施用して、深めにロータリー耕をする。土壌の状態が悪化していると肥効があがらないので、肥効を高めるには土壌診断で不良が認められた場合は改良をする必要がある。桑園土壌は近年非常に酸性化が進み、この改良を重点的に行う必要がある。
  なお、桑は石灰を多く吸収し、降雨等によって石灰は溶脱するので、石灰質資材(炭カル、苦土石灰等)を桑園造成時に施用し、その後も毎年10a当たり100〜200kgずつ施用すべきである。
5)施肥の重要性
  生産力向上はその基盤である土づくりが最大のポイントであり、肥料無しでは多収は望めない。そこで、まずたいきゅう肥等有機物を冬肥として施用し、化学肥料は春肥、夏肥、追肥として施用する。
 春肥の肥効については、本県では5月中旬頃でなければ効果があがらないといわれてきたが、農水省旧蚕試東北支場で黒瀬氏などが重窒素を使った研究を行ない、春桑の発芽20日前に施用した窒素は、第6開葉期(5月6日)の新梢生育に利用されていることがわかった。また山形県新庄市で春肥に施用した窒素は、春蚕期だけでなく初秋・晩秋蚕期、さらに丸2年たった春の新梢の再生産にも利用されていることが明らかとなった。このように、春肥は効果が高く持続性があり、繭の安定生産に欠かせないもので、適期施用に心がけたい。
  夏肥は夏切り後の桑の生育を左右するだけでなく、翌春の収量にも大きく影響することから最も重要な肥料である。すなわち、年間総生育量の約2/3が夏切り後で、この時期の養分不足は収量に与える影響が大きい。そのため、春秋兼用桑園では夏肥に重点をおいた施肥基準になっている。
  追肥は傾斜地や砂質土壌で実施されていたが、近年多回育が普及し、生育の旺盛な桑品種の導入等もあり、速効性の肥料を用いるのがよい。
6)夏蚕飼育用桑園の施肥
  春秋兼用桑園を計画的に夏蚕飼育のため使う場合は、春肥に年間施肥量の60%を施用し、夏蚕時伐採直後に40%施用するのがよい。また、春蚕期に残った桑園を使う場合は、夏肥に施用する量の半量を一般兼用桑園の夏肥時期に、残り半量を夏蚕時伐採直後に施用するのがよい。