肥料の種類と特色
肥料の分類は、その目的によって分類することが一般的である。大きく分類すると、
- 肥料の生産、組成、性質などの自然科学的分類
- 施肥時期、施肥方法、出荷時期など主に栽培に基づく施肥上からの分類
- 品質、規格など肥料取締法に基づく分類
の3つである。
なお、分類の特色について、2.は、既に知識として理解されているところであり省略し、1.、3.について記載する。
(1)自然科学的分類
自然科学的分類の内容を更に細分すると、肥料の形態や生産手段からみた分類、化学反応と生理的反応から見た分類に区分できる。
たとえば、表-1のとおり形態的分類は粒状肥料や粉状肥料などの一次分類にとどまるが、生産手段からみた分類は、さらに入手経路と製造工程から二次分類される。その入手経路は自給と販売であり、製造工程では化学肥料、配合肥料、化成肥料である。
次に、反応からみた分類は表-2のとおり化学的反応と生理的反応からみた分類に区分される。
土壌に施用された肥料の成分が作物に吸収された後に、土壌(培地)に酸性反応を呈させるもの、または塩基性(アルカリ性)反応を呈させるものを残す肥料を、生理的酸性肥料または生理的塩基性(アルカリ性)肥料という。また、これらに反応しないものは生理的中性肥料という。
例えば、生理的酸性肥料である硫安や塩化カリは、土壌溶液中でアンモニウムイオンと硫酸イオン(2NH4++SO42-)及びカリウムイオンと塩素イオン(K++Cl-)に解離する。アンモニウムイオンやカリウムイオンは作物に養分として吸収されるが、硫酸イオンや塩素イオンは作物にあまり吸収されずに、硫酸や塩酸などの強酸となって土壌中に残るので土壌が酸性化してくる。
ただし、尿素は、土壌中で分解し炭酸アンモニウムになり、アンモニウムは作物に吸収され、炭酸が残るが、炭酸は二酸化炭素と水に容易に分解し、二酸化炭素は作物や微生物に吸収されたり揮散するので、土壌を酸性化することは少ない。
(2)肥料取締法に基づく分類
食品の原材料となる農畜水産物の生産段階で用いられる各種資材等について、最終製品である食品の安全性を確保するための措置を講じることが必要との観点から、肥料取締法の一部改正が行われた(平成15年7月1日施行 。)
今回の改正の概要は、下記のとおりである。
- 法律の目的に、国民の健康の保護を明確に位置づけたこと。
- 施用の方法によっては、人や家畜の健康に被害を及ぼすおそれがある肥料を特定普通肥料として分類し、国への登録を義務づけたこと。
- 決められた施用方法を守らずに特定普通肥料を施用した場合 施用者も処罰の対象になること 。
- 罰則の大幅な強化(3年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人は1億円 )
表-3に肥料取締法に基づく肥料の分類を示したが、どのような肥料を特定普通肥料とするかについては、現在、国で検討を行っている(平成15年12月現在)。
肥料取締法第2条第2項に掲げる特殊肥料の分類について紹介すると表-4のとおりである。
表の中の(イ)の指定は魚類、動物等を主原料とした肥料で粉末にしないもの 、(ロ)の指定は肥料の生産工程で、塩酸や遊離硫酸の含量0.5%以上のものを除く動植物系の肥料。
(3)化成肥料の使用上の留意点
肥料の選定にあたっては、作物の種類、土壌の性質や使い方によって効果が異なるので、肥料の特性を理解しておき、肥効が高いこと、土壌特性を壊さないこと、使い易く労力がかからないこと、経済的であることなどに心掛け、次の点に留意すること。
- 土壌を酸性化し易い副成分の多い肥料は、出来るだけ使用をさける。ただし、土壌の反応が中性に近く、塩基飽和度が高すぎる土壌には、生理的酸性を示す化成肥料や単肥を施用する。
- 窒素源として塩安を含む肥料は、水稲に使用する。
- 窒素源として硝酸態窒素を含む肥料は、野菜、果樹、茶等の畑作物に使用する。
- 全窒素の50%以上が尿素態の肥料は、ガス害が発生することがあるので、ハウスやトンネル栽培には使用しない方が安全である。
- 窒素・カリ化成肥料は、原則として追肥用として使用するが、可給態リン酸の多い土壌の基肥にも使用できる。
- 作物を健全に育てるためには、三要素の他に微量要素も適当に補給する必要がある。老朽化が著しい野菜連作畑や微量要素欠乏土壌には、苦土、ほう素、マンガンなどを含む高度化成肥料の効果が期待できる。
- 緩効性のIB窒素、CDU窒素等は、原則として基肥とする。
- ジシアン等の硝酸化成抑制剤を加えてある化成肥料は、土壌中でアンモニアが硝酸に変わる作用を一時的に抑える働きがあるから、水稲肥料として適している。
- 液肥は、主に尿素、硫安、塩安などを原料として製造されているが、硝安が使われているものもある。灌水施設を備えたガラス温室、ビニールハウス、果樹等の追肥に適しているが、銘柄や対象作物によって希釈倍率が異なるので十分に注意する。
- 腐植酸、発酵粕、鶏ふん等を加工し、化成肥料の原料に用いたものがあるが、現在のところ価格がやや高いので、収益性の高い作物に使用したほうがよい。
(4)機械による施肥
作物を栽培する上で、施肥作業は重要である。現在の肥料は、有機質肥料から化学肥料にいたるまで、あらゆる形態・性状を呈しているうえ、単位面積当たりの施用量が多いことから、小規模面積の施用以外は機械化作業となっている。
機械施肥を施肥法で見ると、大きく分けてばらまき施肥と条まき施肥とに区分できる。
○ばらまき施用
ばらまき施肥用の作業機としては、ライムソワー、ブロードキャスタ、マニュアスプレッダが代表的で、主として施用量の多い肥料・資材を全面均一散布するのに使用される。
ばらまき施肥は、土壌改良資材、有機物、基肥など、ほ場全面に散布するものを対象とした施肥法である。このため、これらの作業機は、いずれも散布機能を備えたものが多く、一般に施肥機と呼ばれている。むしろ、散布機と言ったほうが適切かもしれない。
これらの機械で、ほ場全体に散布された資材や肥料は、耕起作業によって土壌中にすき込まれ、全層に撹拌混和されて、肥料の場合は全面全層施肥となる。
○条まき施用
条まき施肥は、畑作物や野菜の基肥と追肥の施用法として用いられるほか、桑、果樹など永年性作物への施肥法として利用されている。
肥効、作業手順との関係から、播種や移植作業の直前に、手作業で条状に施用することが多く行われていたが、播種や移植が機械化されるようになってから、施肥の同時作業化が一気に進んできた。畑での条まき施肥は、局所的な濃度障害を避けるため、種子に対して間隔をおいた間土施肥、あるいは施用した肥料を土壌混和した広幅条施肥が多い。
条まき施肥の作業ができる機械としては、ドリルシーダ、ロータリーシーダ、コーンプランタに代表され、一般的には施肥播種機と呼ばれている。
水稲についても施肥付き田植機が側条施肥田植機として出現し、現在全国の20%にまで達している。
環境問題がクローズアップされている現在、減肥による環境対策を考えつつ、低コスト農業を持続する観点から、条まき施肥法は注目されるところである。