作物の栄養生理と養分吸収(飼料作物及び草地)

作物の栄養生理と養分吸収(飼料作物及び草地)

栄養生理と施肥

 茎葉利用を中心とする飼料作物生産は土壌からの養分収奪が多く、これに見合った施肥が必要である。適正な施用により生産量が高まるのみでなく、一般に飼料価値が向上し、栄養収量は増大する。

 窒素は吸収される養分のうち最も多い要素であり、炭水化物と結合して蛋白質となり茎葉の構成成分として成長量を増大させる。したがって十分な供給は増収効果が期待される。

 リン酸の吸収量は窒素ほど多くはないが、植物体の茎葉で作られた炭水化物の移動や生理作用に重要な役割を果たしているため不足しないようにする。

 カリは窒素と同程度に吸収され、窒素とともに巾広い働きをするため十分供給する必要がある。また、石灰は飼料作物の生育に必要な成分であるとともに土壌に影響を与え、適正に施用されれば土壌を中性付近に保ち、土壌のリン酸の肥効を高く保持する。このことから苦土の補給も兼ねて苦土石灰などの施用に心がける。

 過剰な施肥は、特定成分の過剰蓄積や必須養分の吸収抑制を生じるので注意が必要である。窒素成分の多用は植物体の硝酸態窒素の蓄積を招き、これを多量に摂取した牛は、硝酸中毒を引き起こす事が報告されている。カリの過剰施用は石灰や苦土の吸収を抑制する。また、炭カル等の過剰施用は土壌の上昇を招き、土壌中のマンガン・鉄・銅・亜鉛・ホウ素等の微量要素を不溶化させるため、これらの微量要素欠乏を生じる可能性がある。したがって植物体の成分を適正に維持するためにはバランスのとれた施肥が重要である。

 なお、施肥にあたっては土壌分析を行い、通常の施肥量でよいか確認して施用することが基本となっている。

主要な飼料作物の施肥

  1. 飼料用トウモロコシ
     飼料トウモロコシは肥料要求量の多い作物であり、十分な施肥と適期施肥が必要である。収量に影響する肥料要素として一番大きいのは窒素であり、次いでリン、カリの順と報告されている。
     追肥を行う場合は窒素を基肥として2/3、追肥として1/3を4~7葉期に施用する。なお、基肥全量施用すると作業の省力化の点で有利とされている。
  2. エンバク
      エンバクは酸性土壌には強いが、品質を高めるために石灰資材を施用する。年内利用のものは生育期間が比較的短いため、肥料は速効性のものを使用し、追肥は原則として必要ない。
  3. イタリアンライグラス
     イタリアンライグラスは窒素とカリに対する反応が大きいが、特に窒素の施用効果が高い。窒素の増肥は飼料中の粗蛋白質含量を高くするが、牧草への硝酸態窒素の集積をきたすことが往々にある。窒素10a当たり8kg程度を基肥として、刈り取り回数に応じて適宜追肥すると良い。
  4. 草地(採草地)
     草地における収量段階別の標準的な年間施肥量の概略を示すと表-2のとおりである。
     窒素の施用はイネ科で大きく、マメ科で小さい。適正な施用は草地維持にも必要であるが、過剰な施用は草地荒廃化の要因ともなる。また、リン酸の欠乏も荒廃要因になっている場合が多い。特に、火山灰土壌あるいは火山灰の影響を受けた土壌(黒ボク土)ではリン酸が不足するので土壌分析を行い、不足が認められた場合は補給する。カリの施用効果は一般的に経年草地で大きいほかマメ科でも大きい。石灰は草地造成時に施用するが、牧草による吸収と溶脱によって減少するので、2~3年毎に炭カルを10a当たり100kg程度補給する。また苦土は牧草の生育に必須であり、これの欠乏はグラステタニー症発生の大きな原因となるので補給する。

02表2混播草地の年間標準施用量

飼料作物へのたい肥の適正施用

 たい肥などを適正施用すれば作物への養分を供給するだけてなく、土壌の物理性、化学性および生物性を改善する効果も期待できる。しかし過剰な施用をすると品質低下や家畜への悪影響、環境への負荷の増大を招くことになる。したがって施用するたい肥などの種類・品質・施用量に留意し使用する事が大切である。施用にあたっては草地・飼料畑におけるふん尿処理物の施用基準を表-3にした。

03表3草地・飼料畑におけるふん尿処理物の施用基準

 飼料作物生産にあたっては、たい肥などの施用を基本にして、これを有効活用する事が重要である。このため施用量を決定する場合は、化学肥料等との併用によってバランスを取る。実際には作物に必要なリン酸とカりは全量たい肥から供給するようにして、不足する窒素は化学肥料等と組み合わせて補うようにするのが合理的である。なお、この時の土壌のリン酸、カリの過剰を起こさないために、リン酸またはカリの施用量が10a当たり30kgを越えないように施用量を決定する。

 同じ作物に同じたい肥を連用した場合、窒素が無機化して肥効を発現することから、標準施肥量で毎年施用していくと過剰になる。このことから減肥の必要がある。飼料トウモロコシを例にして、毎年3.0tの牛ふんたい肥を施用していった場合を計算すると、1年目は2kgの成分供給であるが、3年目では5kg程度、8年目では10kg程度、15年目では15kg程度の供給量と算出され、この分は化学肥料を減肥していく事が重要である。また、表作として飼料トウモロコシを作付けし、裏作としてイタリアンライグラス又はライムギを作付けすると、飼料生産量を向上させるとともにたい肥の利用量を増加することができる。

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