土壌の化学性の測定 1
pHの測定
1)原理
土壌に純水を加えて振とうした時、遊離してくる水素イオンの活量をガラス電極pHメーターで測定する。
2)分析手順
- 50mLスチロールびんに風乾細土10g、純水25mLを入れる。
- 栓をして30分間振とうする。
- pHの測定を行う(電極を入れてから30秒くらいおいて読む)。
3)注意点
- 測定値の表示は小数点以下1位までとする。
- 土壌と純水は1:2.5の割合で測定することが原則であるが、ECも同時に測定する場合は簡便法として1:5で測定してもそれほどpH値に差がない。
電気伝導率(EC)の測定
1)原理
土壌を純水で浸出し、その電気伝導率を測定することによって、塩類濃度の過多を推定する。測定は1cm2の2枚の電極板を1㎝間隔で溶液中においたとき、極間の電気抵抗値の逆数をこの溶液の比電気伝導率とよび、S(ジーメンス)/cmで表わせる。
温度が1℃上昇すると電気伝導率は約2%増加するから、比電気伝導率の測定値は、通常25℃に補正して表示する。
2)分析手順
- 100mLスチロールびんに風乾細土10g、純水50mLを入れる。
- 栓をして60分間振とうする。
- 電気伝導度計で測定する。
3)注意点
- 測定値の表示は、mS/cmで小数点以下第2位まで表示する。電気伝導度計によっては異なる単位で表示される場合がある。その場合には次のとおり単位換算を行う。
1mS/cm=1mmoh/cm=1dS/m=100mS/m - ほ場条件下での電気伝導率を正確に測定する場合は、未風乾土を供試する。この際、未風乾土の含水率を測定して、乾土と水の割合が1:5になるように純水を加える。
陽イオン交換容量(CEC)の測定
1)原理
陽イオン交換容量は土壌のもつ陰イオン電荷の総量をあらわすものである。この測定は、酢酸アンモニウム溶液を用い、土壌の交換基に飽和されている陽イオンをアンモニウムイオンで交換飽和させ、過剰の酢酸アンモニウムをアルコールで洗浄後、塩化カリウム溶液でアンモニウムイオンを交換浸出したものについて、アンモニウムイオンを定量し、陽イオン交換容量を求めるものである。なお、アンモニウムイオンの定量は、水酸化カリウム、フェノールおよびニトロプルシッドナトリウムの混合溶液と次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、インドフェノールの青色を発色させて比色をおこなうインドフェノール法である。
2)分析試薬
- 交換試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
- 洗浄試薬:pH 7 80%メタノール
- 抽出試薬:10%塩化カリウム
- CEC発色試薬A:フェノール、ニトロブリシッドナトリウム、EDTA・2Na混合溶液
- CEC発色試薬B:0.1%次亜塩素酸ナトリウム
3)分析手順
▼準備
- ロートにシリコン管を取り付け、押し棒を使って目皿、ろ紙リングを順に装填する。
- ロート架にロートを取り付けシリコン管をピンチコックで閉じる。
- ロートの下に受器を置く。
▼交換/抽出
- CEC用ロートに交換試薬10mLをあらかじめ入れておく。
- 風乾細土1gをロートに添加する。
- 15分間静置したあと、ピンチコックを解放し、ろ過しながら受器に受ける。
- 洗浄試薬5mLを加え、ロート内壁を伝わせながらロート内を洗浄する(1回目洗浄)。
- 同一の操作を繰り返し、液を完全に抜く(2回目洗浄)。
- ロート内に抽出試薬10mL加える。
- 15分間静置したあと、ろ過して受器に受け、抽出ろ液とする。
- 抽出ろ液2mLを振とうびんに採取する。
▼希釈/比色定量
- 振とうびんに純水23mLを加え、振とうびんの25の目盛りまで満たし、よく振とうする。
- 振とうびんらか0.5mLを吸い上げ別の試験管に移す。
- 試験管に純水6mLを加える。
- 発色試薬A2mLを加え、よく振とうする。
- 発色試薬B2mLを加え、よく振とうする。
- 30分間静置し、比色計で測定する。
比色
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:CEC、波長:640nm
測定濃度域 0~44.6me/100g土壌
4)注意点
- 交換から抽出を簡便法で操作した場合、土壌によっては抽出率が低くなる場合がある。
- 発色安定時間 2時間
- 発色試薬A、Bは要冷蔵
交換性石灰の測定
1)原理
OCPCはアルカリ性でCa2+と錯体を形成し、紫赤色を呈するのでこれを測定する。本法は8-オキシキノリンを添加することにより、Mg2+の妨害を除去できるが、多量のFe3+に妨害される。
2)分析試薬
- 抽出試薬:pH7 N-酢酸アンモニウム
- 石灰発色試薬原液A:オキシキノリンを含むOCPC溶液(要冷蔵)
- 石灰発色試薬原液B:pH 11緩衝液
- 石灰発色試薬:発色試薬原液Aを1に対して、同原液Bを10の割合で混合する。 使用当日調整
- 石灰ブランク用試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
3)分析手順(簡便法)
- 風乾細土1gを薬包紙に取る。
- 土が残らないようにはけを使って振とうびんに移す。
- 石灰抽出液(原液を5倍希釈)20mLを加える。
- 30分間振とうし、ろ過する。
- ろ液0.2mLを試験管に採取する(ブランクはブランク用試薬を0.2mL分注する)。
- 石灰発色試薬5mL添加(ブランクも同様添加)。
比色(5分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:CaO、波長:570nm
測定濃度域 0~44.6mg/100g土壌
4)注意点
- 簡便法で抽出した場合の測定値は、常法による測定値より多少低めになる(80~90%)。
- 発色は温度の影響を受けるので20~30℃の室温で操作することが望ましい。
- 発色安定時間 2時間
- 発色試薬原液Aは要冷蔵
- 交換性石灰・苦土は分析感度が高いので、試験管類は充分に洗浄したものを使用する。
- 交換性石灰・苦土・加里の高濃度の希釈分析は必ずN-酢酸アンモニウムで希釈すること。
交換性苦土の測定
1)原理
キシリジブルー1はアルカリ性で、Mg2+と錯体を形成し、赤紫色を呈するのでこれを測定する。カルシウム、マンガンも同様の反応をするがGEDTAによりその影響を除去できる。また、鉄、アルミニウムなどのイオンも発色を妨害するがトリエタノールアミンを添加することにより妨害を除去できる。
2)分析試薬
- 苦士発色試薬:GEDTA、トリエタノールアミンを含むpH 11.7キシリジブルー1溶液
- 苦士ブランク用試薬:pH7 N-酢酸アンモニウム
3)抽出
交換性石灰に同じ。
4)分析手順
- ろ液0.2mLを試験管に採取する(ブランクはブランク用試薬を0.2mL分注する)。
- 苦土発色試薬5mL添加(ブランクも同様添加)。
比色(20分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:MgO、波長:515nm
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
5)注意点
- 簡便法で抽出した場合の測定値は、常法による測定値より多少低めになる(90~95%)。
- 発色は温度の影響を受けるので、15℃以下で操作するときには、静置時間を30~40分に延長しておこなう。
- 発色安定時間 2時間
交換性カリの測定
1)原理
フレームフォトメーターを使用した炎光光度法によって測定する。
2)分析試薬
- 加里100合わせ用試薬:K2O 50ppm標準液(pH 7 N-酢酸アンモニウム溶液)
- 加里ブランク用試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
3)抽出
交換性石灰に同じ。
4)分析手順
抽出ろ液を直接炎光光度計によって測定
測定ランプ FLAME
モード SOIL
波長 768nm(加里干渉フィルター挿入)
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
5)注意点
- 試料液等の中に異物があるとシッピングチューブに目づまりをおこすので注意する。
- 高濃度の場合の希釈は必ず抽出試薬(pH 7 N-酢酸アンモニウム)を使用する。
可給態リン酸の測定(トルオーグ法)
1)原理
リン酸イオンがモリブデン酸アンモニウムおよび酒石酸アンチモニルカリウムと反応して生成するへテロポリ化合物をアスコルビン酸で還元し、生成したモリブデン青を測定する。Cl-、SO2+などの塩類が多量に存在しても妨害しないが、ひ素は同様の発色をして妨害する。また、Fe3+は多量 に存在するとモリブデン青を退色させるが、アスコルビン酸の添加量を多くすることにより、妨害を除去できる。
2)分析試薬
- トルオーグ法りん酸発色試薬原液A:モリブデン酸アンモニウムと酒石酸アンチモニルカリウムを含む硫酸酸性溶液
- トルオーグ法りん酸発色試薬原液B:アスコルビン酸粉末
- 発色試薬:発色試薬原液A20mLに発色試薬原液Bを試薬マス大(1mLカップ)にすり切り一杯加えて溶かす。(使用当日調整)
- 抽出試薬:0.002N-硫酸
3)分析手順
- 風乾細土0.5gを120mLスチロールびんに入れ、抽出液100mLを加える。
- 30分間振とうし、No.5のろ紙でろ過する。
- 低濃度測定の場合、試験管にろ液8mLを採取、純水6mLを加える。
高濃度測定の場合、試験管にろ液2mLを採取、純水6mLを加える。 - リン酸発色試薬1mLを添加する(ブランクも同様添加)。
比色(10分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目(低濃度測定時):Tr-P2O5(L)、(高濃度測定時):Tr-P2O5(H)
波長:710nm、測定濃度域 低濃度測定 0~50.0mg/100g土壌、高濃度測定 0~2000mg/100g土壌
4)注意点
- 測定濃度域によって、ろ液の採取量が異なるので注意する。
- 発色安定時間 24時間
- 発色試薬原液Aは医薬用外劇物なので注意する。
可給態ケイ酸の測定
1)原理
ケイ酸は酸性溶液中でモリブデン酸アンモニウムと反応し、黄色のケイモリブデン酸を生成する。これをアスコルビン酸で還元すると青色のケイモリブデン酸青となるので、これを測定する。リン酸もケイ酸と同様の反応をして、リンモリブデン酸黄を生成するが、酒石酸を添加することによりこれを分解して妨害を除去できる
2)分析試薬
- ケイ酸発色試薬A:モリブデン酸アンモニウムの塩酸酸性溶液(要冷蔵)
- ケイ酸発色試薬B:酒石酸溶液
- ケイ酸発色試薬C:アスコルビン酸粉末
- ケイ酸ブランク用試薬:pH 4 N-酢酸ナトリウム
- 抽出試薬:pH 4 N-酢酸ナトリウム
3)分析手順
- 風乾細土5gを120mLスチロールびんに入れ、抽出液50mLを加える。
- 時々振とうしながら、抽出(40℃、5時間)し、ろ過する。
- ろ過液0.5mLを試験管に採取し、純水8mLを加える。
- 発色試薬Aを1mL添加し、20分間放置する(ブランクも同様添加)。
- 発色試薬Bを1mL添加し、3分間放置する(ブランクも同様添加)。
- 発色試薬Cを試薬さじ(小)にすり切り一杯加え、5分間放置する。
比色(10分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:SiSO2、波長:810nm
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
4)注意点
- 発色試薬操作中、発色試薬Bを加えた後、放置時間が長すぎるとケイモリブデン酸をも分解して誤差を生じるので、所定の時間を守ること。