4.土壌の化学性の測定
 陽イオン交換容量(CEC)、交換性塩基(石灰、苦土、カリ)、加給態リン酸及び加給態ケイ酸の分析法はSPAD分析法による簡便法を記した。pH及びECの測定は土壌養分分析法委員会編「土壌養分分析法」に基づいている。
(1)pHの測定
1)原理
   土壌に純水を加えて振とうした時、遊離してくる水素イオンの活量をガラス電極pHメーターで測定する。
2)分析手順
1. 50mLスチロールびんに風乾細土10g、純水25mLを入れる。
2. 栓をして30分間振とうする。
3. pHの測定を行う(電極を入れてから30秒くらいおいて読む)。
3)注意点
1. 測定値の表示は小数点以下1位までとする。
2. 土壌と純水は1:2.5の割合で測定することが原則であるが、ECも同時に測定する場合は簡便法として1:5で測定してもそれほどpH値に差がない。
(2)電気伝導率(EC)の測定
1)原理
 土壌を純水で浸出し、その電気伝導率を測定することによって、塩類濃度の過多を推定する。測定は1cm2の2枚の電極板を1㎝間隔で溶液中においたとき、極間の電気抵抗値の逆数をこの溶液の比電気伝導率とよび、S(ジーメンス)/cmで表わせる。
 温度が1℃上昇すると電気伝導率は約2%増加するから、比電気伝導率の測定値は、通常25℃に補正して表示する。
2)分析手順
1. 100mLスチロールびんに風乾細土10g、純水50mLを入れる。
2. 栓をして60分間振とうする。
3. 電気伝導度計で測定する。
3)注意点
1.  測定値の表示は、mS/cmで小数点以下第2位まで表示する。電気伝導度計によっては異なる単位で表示される場合がある。その場合には次のとおり単位換算を行う。
 1mS/cm=1mmoh/cm=1dS/m=100mS/m
2.  ほ場条件下での電気伝導率を正確に測定する場合は、未風乾土を供試する。この際、未風乾土の含水率を測定して、乾土と水の割合が1:5になるように純水を加える。
(3)陽イオン交換容量(CEC)の測定
1)原理
 陽イオン交換容量は土壌のもつ陰イオン電荷の総量をあらわすものである。この測定は、酢酸アンモニウム溶液を用い、土壌の交換基に飽和されている陽イオンをアンモニウムイオンで交換飽和させ、過剰の酢酸アンモニウムをアルコールで洗浄後、塩化カリウム溶液でアンモニウムイオンを交換浸出したものについて、アンモニウムイオンを定量し、陽イオン交換容量を求めるものである。なお、アンモニウムイオンの定量は、水酸化カリウム、フェノールおよびニトロプルシッドナトリウムの混合溶液と次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、インドフェノールの青色を発色させて比色をおこなうインドフェノール法である。
2)分析試薬
1. 交換試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
2. 洗浄試薬:pH 7 80%メタノール
3. 抽出試薬:10%塩化カリウム
4. CEC発色試薬A:フェノール、ニトロブリシッドナトリウム、EDTA・2Na混合溶液
5. CEC発色試薬B:0.1%次亜塩素酸ナトリウム
3)分析手順
<準備>
1. ロートにシリコン管を取り付け、押し棒を使って目皿、ろ紙リングを順に装填する。
2. ロート架にロートを取り付けシリコン管をピンチコックで閉じる。
3. ロートの下に受器を置く。
<交換/抽出>
1. CEC用ロートに交換試薬10mLをあらかじめ入れておく。
2. 風乾細土1gをロートに添加する。
3. 15分間静置したあと、ピンチコックを解放し、ろ過しながら受器に受ける。
4. 洗浄試薬5mLを加え、ロート内壁を伝わせながらロート内を洗浄する(1回目洗浄)。
5. 同一の操作を繰り返し、液を完全に抜く(2回目洗浄)。
6. ロート内に抽出試薬10mL加える。
7. 15分間静置したあと、ろ過して受器に受け、抽出ろ液とする。
8. 抽出ろ液2mLを振とうびんに採取する。
<希釈/比色定量>
1. 振とうびんに純水23mLを加え、振とうびんの25の目盛りまで満たし、よく振とうする。
2. 振とうびんらか0.5mLを吸い上げ別の試験管に移す。
3. 試験管に純水6mLを加える。
4. 発色試薬A2mLを加え、よく振とうする。
5. 発色試薬B2mLを加え、よく振とうする。
6. 30分間静置し、比色計で測定する。
比色
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:CEC、波長:640nm
測定濃度域 0~44.6me/100g土壌
4)注意点
1. 交換から抽出を簡便法で操作した場合、土壌によっては抽出率が低くなる場合がある。
2. 発色安定時間 2時間
3. 発色試薬A、Bは要冷蔵
(4)交換性石灰の測定
1)原理
 OCPCはアルカリ性でCa2+と錯体を形成し、紫赤色を呈するのでこれを測定する。本法は8-オキシキノリンを添加することにより、Mg2+の妨害を除去できるが、多量のFe3+に妨害される。
2)分析試薬
1. 抽出試薬:pH7 N-酢酸アンモニウム
2. 石灰発色試薬原液A:オキシキノリンを含むOCPC溶液(要冷蔵)
3. 石灰発色試薬原液B:pH 11緩衝液
4. 石灰発色試薬:発色試薬原液Aを1に対して、同原液Bを10の割合で混合する。 使用当日調整
5. 石灰ブランク用試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
3)分析手順(簡便法)
1. 風乾細土1gを薬包紙に取る。
2. 土が残らないようにはけを使って振とうびんに移す。
3. 石灰抽出液(原液を5倍希釈)20mLを加える。
4. 30分間振とうし、ろ過する。
5. ろ液0.2mLを試験管に採取する(ブランクはブランク用試薬を0.2mL分注する)。
6. 石灰発色試薬5mL添加(ブランクも同様添加)。
比色(5分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:CaO、波長:570nm
測定濃度域 0~44.6mg/100g土壌
4)注意点
1. 簡便法で抽出した場合の測定値は、常法による測定値より多少低めになる(80~90%)。
2. 発色は温度の影響を受けるので20~30℃の室温で操作することが望ましい。
3. 発色安定時間 2時間
4. 発色試薬原液Aは要冷蔵
5. 交換性石灰・苦土は分析感度が高いので、試験管類は充分に洗浄したものを使用する。
6. 交換性石灰・苦土・加里の高濃度の希釈分析は必ずN-酢酸アンモニウムで希釈すること。
(5)交換性苦土の測定
1)原理
 キシリジブルー1はアルカリ性で、Mg2+と錯体を形成し、赤紫色を呈するのでこれを測定する。カルシウム、マンガンも同様の反応をするがGEDTAによりその影響を除去できる。また、鉄、アルミニウムなどのイオンも発色を妨害するがトリエタノールアミンを添加することにより妨害を除去できる。
2)分析試薬
1. 苦士発色試薬:GEDTA、トリエタノールアミンを含むpH 11.7キシリジブルー1溶液
2. 苦士ブランク用試薬:pH7 N-酢酸アンモニウム
3)抽出
 交換性石灰に同じ。
4)分析手順
1. ろ液0.2mLを試験管に採取する(ブランクはブランク用試薬を0.2mL分注する)。
2. 苦土発色試薬5mL添加(ブランクも同様添加)。
比色(20分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:MgO、波長:515nm
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
5)注意点
1. 簡便法で抽出した場合の測定値は、常法による測定値より多少低めになる(90~95%)。
2. 発色は温度の影響を受けるので、15℃以下で操作するときには、静置時間を30~40分に延長しておこなう。
3. 発色安定時間 2時間
(6)交換性カリの測定
1)原理
 フレームフォトメーターを使用した炎光光度法によって測定する。
2)分析試薬
1. 加里100合わせ用試薬:K2O 50ppm標準液(pH 7 N-酢酸アンモニウム溶液)
2. 加里ブランク用試薬:pH 7 N-酢酸アンモニウム
3)抽出
 交換性石灰に同じ。
4)分析手順
抽出ろ液を直接炎光光度計によって測定
測定ランプ FLAME
モード SOIL
波長 768nm(加里干渉フィルター挿入)
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
5)注意点
1. 試料液等の中に異物があるとシッピングチューブに目づまりをおこすので注意する。
2. 高濃度の場合の希釈は必ず抽出試薬(pH 7 N-酢酸アンモニウム)を使用する。
(7)可給態リン酸の測定(トルオーグ法)
1)原理
 リン酸イオンがモリブデン酸アンモニウムおよび酒石酸アンチモニルカリウムと反応して生成するへテロポリ化合物をアスコルビン酸で還元し、生成したモリブデン青を測定する。Cl-、SO2+などの塩類が多量に存在しても妨害しないが、ひ素は同様の発色をして妨害する。また、Fe3+は多量 に存在するとモリブデン青を退色させるが、アスコルビン酸の添加量を多くすることにより、妨害を除去できる。
2)分析試薬
1. トルオーグ法りん酸発色試薬原液A:モリブデン酸アンモニウムと酒石酸アンチモニルカリウムを含む硫酸酸性溶液
2. トルオーグ法りん酸発色試薬原液B:アスコルビン酸粉末
3. 発色試薬:発色試薬原液A20mLに発色試薬原液Bを試薬マス大(1mLカップ)にすり切り一杯加えて溶かす。(使用当日調整)
4. 抽出試薬:0.002N-硫酸
3)分析手順
1. 風乾細土0.5gを120mLスチロールびんに入れ、抽出液100mLを加える。
2. 30分間振とうし、No.5のろ紙でろ過する。
3. 低濃度測定の場合、試験管にろ液8mLを採取、純水6mLを加える。
高濃度測定の場合、試験管にろ液2mLを採取、純水6mLを加える。
4. リン酸発色試薬1mLを添加する(ブランクも同様添加)。
比色(10分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目(低濃度測定時):Tr-P25(L)、(高濃度測定時):Tr-P25(H)
波長:710nm、測定濃度域 低濃度測定 0~50.0mg/100g土壌、高濃度測定 0~2000mg/100g土壌
4)注意点
1. 測定濃度域によって、ろ液の採取量が異なるので注意する。
2. 発色安定時間 24時間
3. 発色試薬原液Aは医薬用外劇物なので注意する。
(8)可給態ケイ酸の測定
1)原理
 ケイ酸は酸性溶液中でモリブデン酸アンモニウムと反応し、黄色のケイモリブデン酸を生成する。これをアスコルビン酸で還元すると青色のケイモリブデン酸青となるので、これを測定する。リン酸もケイ酸と同様の反応をして、リンモリブデン酸黄を生成するが、酒石酸を添加することによりこれを分解して妨害を除去できる
2)分析試薬
1. ケイ酸発色試薬A:モリブデン酸アンモニウムの塩酸酸性溶液(要冷蔵)
2. ケイ酸発色試薬B:酒石酸溶液
3. ケイ酸発色試薬C:アスコルビン酸粉末
4. ケイ酸ブランク用試薬:pH 4 N-酢酸ナトリウム
5. 抽出試薬:pH 4 N-酢酸ナトリウム
3)分析手順
1. 風乾細土5gを120mLスチロールびんに入れ、抽出液50mLを加える。
2. 時々振とうしながら、抽出(40℃、5時間)し、ろ過する。
3. ろ過液0.5mLを試験管に採取し、純水8mLを加える。
4. 発色試薬Aを1mL添加し、20分間放置する(ブランクも同様添加)。
5. 発色試薬Bを1mL添加し、3分間放置する(ブランクも同様添加)。
6. 発色試薬Cを試薬さじ(小)にすり切り一杯加え、5分間放置する。
比色(10分後)
測定ランプ:PHOTO、モード:SOIL、項目:SiSO2、波長:810nm
測定濃度域 0~100.0mg/100g土壌
4)注意点
1. 発色試薬操作中、発色試薬Bを加えた後、放置時間が長すぎるとケイモリブデン酸をも分解して誤差を生じるので、所定の時間を守ること。
(9)土壌の酸度矯正法(酸性・アルカリ性土壌の矯正)
1)酸性土壌の矯正
1. 測定手順
 乾土100gの土壌をビニールシート上にひろげ、炭カルなどを0.1g、0.2g、0.4gと量をかえて添加し、最大容水量の60~65%となる純水を加えて、500mLビーカーに入れる。ポリフィルムでふたをし、よく混ぜて3~5日放置する。純水200mLを加え撹拌し、30分してからpHを測定する。
土壌は水分W%とすると、10,000/(100-W)で乾土100g相当となる。
簡易な容水量の求め方:ろうとにろ紙を入れて純水でよくぬらし、水がたれなくなってから全体の重量を測定する(重量A)。その後、ろうとに土壌30gを入れて十分に純水を加え、水がたれなくなってから全体の重量を測定する(重量B)。
容水量(%)= 0.3×供試土壌の水分(%)+(B-A-30) ×100

B-A
2. 添加量の求め方
 アルカリ資材の添加量と測定したpHとの関係を図-1のように示し、図から希望するpHに矯正するのに必要なアルカリ資材の量を求める。土壌の仮比重が1の場合、乾土100g当たり0.1gのアルカリ資材は10aで深さ10cmの乾土量に換算すると100kgに相当する。
2)アルカリ性土壌の矯正
 土壌がアルカリ性でpHを下げる必要がある場合には、希硫酸や硫黄粉末もしくは土壌pH降下資材を添加し、土壌が酸性の場合と同様に処理して10a当たりの資材添加量を求める。硫黄粉末や土壌pH降下資材は固体資材であり、アルカリ資材の場合とまったく同様にして求めることができるが、希硫酸の場合には以下に述べる操作が必要である。
1. 試薬
 5%硫酸:水約900mLに硫酸50gを加え、冷えてから更に水を加え1000mLとする。
2. 処理手順
 乾土100g相当の土壌をビニールシート上にひろげ、5%硫酸を1、2、3、4、8、16mLと量をかえて添加し、水で最大容水量の60%に調整し混合してから500mLビーカーに入れ、ポリフィルムでふたをし一晩放置する。水200mLを加え撹拌し、30分してからpHを測定する。
3. 添加量の求め方
 土壌が酸性の場合と同じく、図-2のように示して添加必要量を求め、10a当たりに換算する。
3)注意事項
1. 土壌により緩衝能が異なるので、土壌ごとに添加試験をした方が正確である。
2. 添加試験はビニール袋で行ってもよい。土の量を1kgとすると添加資材をグラム単位にすることができる。pHを測定するときは、その一部を供試する。
3. 硫黄粉末は冬の低温期間中はpH降下に必要な微生物反応が期待できず、効果を発揮できない。希硫酸と土壌pH降下資材は季節を問わず速効的である。
4. 本県の土壌は元来微酸性である。土壌がアルカリ化しpH降下を必要とするような場合は、土壌改良資材の二重投資となり大変不経済である。いつも適正域に維持できるよう、改良に心がけることが大切である。
(10)RQフレックスによる硝酸イオン迅速分析法
1)原理
 サンプル中の硝酸は還元剤によって亜硝酸になり、酸性バッファー中で生じた亜硝酸と芳香族アミンが反応し、ジアゾニウム塩を生成する。ジアゾニウム塩はN-(1-ナフチル)-エチレンジアミンとアゾカップリングし、赤紫色のアゾ化合物を生成する。この呈色部分に光を当て、その反射光の強さからサンプル中の硝酸の濃度を測定する。
図-3 RQフレックスと機器分析との相関性)
2)分析機器
 小型反射式光度計(RQフレックス)は試験紙と小型反射式光度計がセットになっている。試験紙のロットごとに波長の補正や検量線が書き込まれたバーコードを用いて、条件設定を行い、濃度を読みとるもので、携帯用として現場での診断が可能である。
 測定方法は、試験紙を試料に浸すのと同時に光度計のスタートスイッチを押す。反応時間終了5秒前を知らせるアラーム音が鳴ったら、試験紙を光度計のアダプターにはさみ測定する。
 測定結果は画面に表示される。
3)分析手順
1. 乾燥した土壌10gをビーカー等にとる。
2. 純水50mLを加え、充分にかくはんする。
3. 土壌溶液をろ過する。
4. ろ過をRQフレックスで測定する。
4)計算式
NO3イオンmg/乾土 kg=RQ測定値×5
5)注意点
1. 高濃度(225ppm以上)の場合は希釈し、希釈倍率を測定値に掛ける。
2. 土壌中のりん酸、石灰、苦土、加里はそれぞれSPADと同じ抽出液で同様に前処理を行い、RQフレックスにて測定。一方、ブランクも測定し、定量値から差し引く。
(11)汁液診断
 近年、小型反射式光度計(RQフレックス)による簡易な栄養診断が注目されている。特に、野菜や花の葉柄部分に硝酸態窒素が多いことから、この部位を用いたリアルタイムの栄養診断が検討されている。特に、果菜類やバラ等で汁液中の硝酸濃度の適正な目安が報告されている(地域重要研究成果報告:「リアルタイム土壌溶液・栄養診断による施設園芸作物の効率的肥培管理システムの開発」(1995)。
 群馬県は専門技術員調査研究、農業技術センターの調査により若干の知見が得られたので併せて紹介する。
1)採取部位
キュウリ :14~16節の本葉の葉柄、または、側枝第一葉の葉柄
トマト :ピンポン玉程度に肥大した果実周辺の葉の葉柄
ナス :最新の展開葉から3葉目の葉柄
イチゴ :最新の展開葉から3葉目の葉柄
バラ :採花枝の下から3、4枚目の5枚葉の葉柄
キク :展開葉からその下の3枚目間での葉
2)汁液の採取方法
 キュウリ、トマト、シクラメン等は葉柄中の汁液が多いので、1cm程度にカッターナイフで切ってニンニク搾り器で搾る。
 バラは葉柄中の汁液が少ないので、葉柄部分を切り取り、それを2mm程度に切って30倍量の純水を加えて乳鉢で摩砕し、ろ過して汁液を採取する。
 キクは葉をみじん切りにし、20倍量の純水を加えて乳鉢で摩砕し、ろ過して汁液を採取する。
3)測定方法(小型反射式光度計(RQフレックス)システム)
硝酸イオン: 試験紙を適正な倍率に希釈した試料に2秒間浸し、同時に光度計のスタートスイッチを押す。反応時間終了5秒前を知らせるアラーム音が鳴ったら、試験紙を光度計のアダプターにはさみ込み、画面に表示された測定値を読む。
その他イオン: RQフレックスの測定マニュアルに従って測定する。
4)診断の目安
 汁液診断はまだ試験例が少なく、現在のところ、埼玉県園芸試験場等の報告を参考にしているが、バラ、キクについては群馬県の中間結果を用いた。
表-1 バラの適正な葉色値と葉液汁液注養分濃度
表-2 キクの適正な葉の汁液中養分濃度(多量要素)
表-3 キクの適正な葉の汁液中養分濃度(微量要素)
表-4 汁液診断の硝酸濃度の目安
5)シクラメンの汁液(樹液)診断
 群馬県農業技術センターが作成したシクラメンの汁液(樹液)診断に基づく施肥管理技術を以下にまとめた。
1. 基本的な考え方
 シクラメンの樹液中に存在する硝酸態窒素濃度は、根から吸われた窒素と、葉で同化され、有機化された窒素の収支が現れていると考えている。葉で同化される窒素のスピードは光合成によって支配されているため、シクラメンの光合成条件が良いほど窒素の有機化が進み、樹液中硝酸態窒素濃度は下がる傾向になる。反対に、光合成に適さない高温や、葉温を上げる強日照条件が続くと、上がる傾向となる。気候は人為的に操作することはできないため、樹液診断に基づく施肥管理とは、その年ごとの気候に見合った、言い換えると年ごとの光合成速度に見合った施肥量を、樹液中の硝酸態窒素濃度から判断し、不足分を補っていくという技術である。
2. 樹液採取部位
 完全展開した直後の葉柄を採取し、ニンニク搾り器で搾汁したものを用いる。個体差による影響を少なくするため5鉢程度から葉柄を採取する。
3. 樹液分析をする成分
 樹液診断をする成分は、施肥管理に診断値に基づき処方として反映できるものである。K2Oは窒素と同じ割合で施肥管理をしていれば、樹液値が大きく変化することがないことから、NO3-NとP25を週1回程度測定する。
4. 樹液中の硝酸態窒素と芽の動き
 シクラメン樹液中の硝酸態窒素濃度は芽の動きと密接な関係があり(表-5)、それによって花芽が優先となるか葉芽が優先となるかの方向性が決定されると考えられる。
5. 生育ステージと樹液中の硝酸態窒素目標値
 シクラメンの生育ステージと作型の関係は図-4のとおりである。「側芽の確保」から「花芽分化」、「葉数増加と花芽の伸長」の3つのステージに分けて考えることができる。それぞれのステージにおいて硝酸態窒素濃度の目標値を考慮して、施肥管理を行う(表-6 シクラメンの生育ステージと樹液中の硝酸態窒素濃度目標値図-5 時期別の樹液中硝酸態窒素濃度管理(12月上旬出荷)樹液中リン酸目標値)
 特に「側芽の確保」ステージにおける側芽数は、最終的な葉数に最も大きな影響を与える。このステージで側芽を増やせば、秋以降の葉枚数の増加期には葉分け等の管理作業が多大となる。そのため、それぞれの経営方針や労力等を考慮し、目標とする側芽数を決定する。花芽分化期までの施肥管理は、葉数を増やして手をかける人は上限付近を目標にし、手をかけないで作る人は下限を目標にする。さらに、下限付近でも株が大きくなる場合は、播種期を遅らせる等で調整する。
6. 樹液中のリン酸目標値
 樹液中のリン酸濃度は年間を通し 100~200ppmで管理する。硝酸態窒素濃度ほど施肥管理に敏感に反応しないが、芽の動きが活発になる5月下旬~6月と、9月中旬~10月にかけて急激に低下することがある。特に6月のリン酸不足は側芽数の増加に関わるので、注意する。
7. 樹液中硝酸態窒素濃度に基づく窒素施肥の処方
 目標値を下回った場合に施用する液肥は、N-P-Kが1:1:1で含まれる成分比のものを使い、窒素濃度を生育ステージ別に、側芽数の確保の時期が50~150ppm、花芽分化の時期が50~100ppm、葉数増加と花芽の伸長の時期が100~200ppmに調整して施用する。施肥濃度をどの程度にするかは、1週間おきのデータが下降しているときには高めの濃度で、平行または、上昇しているときには低めの濃度を用いる。
8. 樹液中リン酸濃度に基づくリン酸の処方
 リン酸は赤土等火山灰土を用土に用いた場合、施肥されたリン酸が用土に吸着され、施肥の効果が現れにくい。火山灰土を用いる場合は、リン酸の吸着量を表すリン酸吸収係数を基に、その60~80%のリン酸を基肥として施用しておく。さらに、樹液濃度が下限値から低下する場合は、第1リン酸カリをリン酸濃度が 100ppmになるよう調整し、液肥として施用する。